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預り金・未払金・未払費用の違いと仕訳例【初心者向け】

混同しやすい3つの負債科目

日々の会計処理で「預り金」「未払金」「未払費用」という勘定科目を見かけることは多いですが、
初心者にとっては「どれも未払いのお金」という印象で、違いがあいまいになりがちです。

しかし、この3つの科目は発生のきっかけ・会計処理のタイミング・税務上の扱いが異なります。
正しく区別できないと、次のような問題が生じます。

  • 仕訳が誤っているために決算書の負債残高が正確でなくなる

  • 税務調査で「科目の誤用」を指摘され、修正申告を求められる

  • 経営判断に使う財務データが不正確になり、資金繰り計画に影響する

正しい理解は、単なる会計知識のためだけではなく、経営判断の精度と税務リスク低減のためにも必要です。


なぜ混同が起こるのか?

初心者が「預り金」「未払金」「未払費用」を混同しやすい理由は主に3つあります。

  1. すべて貸借対照表の負債項目に分類される
    → 仕訳上、貸方に計上されるケースが多く、見た目が似ている。

  2. 発生時に現金の動きがない場合がある
    → 発生主義会計では、支払や受取がなくても計上するため、感覚的に捉えにくい。

  3. 日常会話での「未払い」の意味と会計上の定義が違う
    → 実務では「まだ払っていないお金」を全部「未払金」と呼びがちだが、会計上は用途別に科目を使い分ける必要がある。

特に小規模事業や個人事業主では、科目の誤用が年度末まで放置されることも多く、結果的に決算修正が必要になるケースも少なくありません。


用途と発生原因で明確に区別する

「預り金」「未払金」「未払費用」は、以下のように発生原因と用途で区別できます。

勘定科目 発生原因 主な用途 会計処理タイミング
預り金 他人から一時的に預かっているお金 源泉所得税の預り、社会保険料の従業員負担分 預かった時点で計上し、納付時に消す
未払金 商品やサービス以外の債務 固定資産の購入、備品代、外注費など 請求を受けた時点で計上
未払費用 役務提供を受けたが、まだ請求書が届いていない費用 利息、地代家賃、広告費など 決算時などに見越計上

つまり、

  • 他人から預かっているか → 預り金

  • 物やサービスを購入して請求を受けたか → 未払金

  • サービス提供を受けたが未請求か → 未払費用

このルールを頭に入れることで、仕訳の迷いは大きく減ります。

正しい区別が必要な3つの根拠


会計基準上の位置づけの違い

「預り金」「未払金」「未払費用」はすべて貸借対照表の流動負債に分類されますが、その性質は異なります。

  • 預り金:企業の資産ではなく、他者の資産を一時的に預かっている状態。純粋な債務。

  • 未払金:商品・製品以外の購入や役務提供に伴う支払義務。

  • 未払費用:決算日までに発生しているが、まだ請求や支払いがされていない費用の見越し計上。

会計基準では「発生主義」が原則であり、現金の動きがなくても債務が確定していれば負債として計上します。


税務上の取扱いの違い

預り金は収益でも費用でもなく、損益計算書には計上されません。例えば給与天引きの源泉所得税や社会保険料の従業員負担分が該当し、税務上は納付すれば解消され、課税所得には影響しません。

一方、未払金や未払費用は損益に直結します。

  • 未払金は、債務が確定した時点で損金算入可能(請求書を受領した時点が多い)です。

  • 未払費用は、決算時の見越計上によって翌期の支払分を当期の費用に含めることが可能です。

ただし、税務調査では「債務確定基準」に基づき、契約内容や役務提供日などの証拠が求められるため、計上根拠の明確化が重要です。


間違えやすいケースと背景

実務では以下のような誤用がよく見られます。

  1. 預り金を未払金として計上してしまう
     → 例:従業員の源泉所得税を未払金に入れてしまう。

  2. 未払費用を未払金として計上してしまう
     → 例:決算時に請求書未着の家賃や広告費を未払金にしてしまう。

  3. 未払金と買掛金の混同
     → 例:商品仕入による負債を未払金に計上し、原価計算が狂う。

こうした誤りの原因には、経理担当者が専門知識を持っていない場合や、クラウド会計ソフトの自動仕訳設定ミスなどがあります。月次では気付かれず、決算時に大きな修正が必要になることもあります。

仕訳パターンと使い分けの整理


預り金の仕訳例

ケース1:給与支給時の源泉所得税の預り

(借方)給与手当  300,000 /(貸方)現金預金   270,000
                /(貸方)預り金   30,000

この場合の「預り金」は、従業員から一時的に預かった税金であり、後日税務署に納付します。

ケース2:社会保険料の従業員負担分を預かった場合

(借方)給与手当  300,000 /(貸方)現金預金  260,000
                /(貸方)預り金  40,000

ここでの預り金は、年金事務所や健康保険組合への納付義務があるお金です。


未払金の仕訳例

ケース1:備品を掛けで購入

(借方)消耗品費  50,000 /(貸方)未払金 50,000

この場合、商品や原材料ではなく備品購入のため「未払金」とします。

ケース2:外注業務の請求を受けたが未払い

(借方)外注費   100,000 /(貸方)未払金 100,000

売上原価の一部であっても、仕入れ以外は未払金で処理します。


未払費用の仕訳例

ケース1:決算時に家賃を見越計上
決算日が3月末で、4月に支払う4月分家賃の一部が3月までの期間にかかっている場合。

(借方)地代家賃  50,000 /(貸方)未払費用 50,000

ケース2:利息の未払い

(借方)支払利息  10,000 /(貸方)未払費用 10,000

役務提供が終了しているため、請求書がまだでも発生主義で費用計上します。


間違えやすい仕訳と正しい修正方法

誤った処理 本来の正しい処理
従業員源泉所得税を未払金で計上 預り金で計上し、納付時に消す
決算時の広告費未払いを未払金で計上 未払費用で見越計上
商品仕入の掛代金を未払金で計上 買掛金で計上(仕入取引のため)

比較表による総まとめ

項目 預り金 未払金 未払費用
性質 他人から一時的に預かっているお金 商品・サービス以外の購入による債務 役務提供を受けたが未請求の費用
主な例 源泉所得税、社会保険料従業員負担分 備品購入代金、外注費 利息、家賃、広告費
損益計算書への影響 なし 費用計上あり 費用計上あり
計上時期 預かった時点 請求書受領時 決算や発生日に見越計上

実務で間違えないためのポイントと改善策


科目選択を間違えないためのチェックリスト

経理担当者や事業主が日々の仕訳入力で迷わないよう、次のチェック項目を活用しましょう。

仕訳前に確認する3ステップ

  1. そのお金は自社のものか、他人から預かっているだけか
     → 他人のお金なら「預り金」

  2. 買掛金に該当する仕入れか、それ以外の商品・サービス購入か
     → 仕入れ以外なら「未払金」

  3. 決算時に発生しているが未請求の費用か
     → 見越計上なら「未払費用」


クラウド会計ソフトでの設定ポイント

freeeやマネーフォワードなどのクラウド会計では、自動仕訳ルールを正しく設定することで誤用を防げます。

  • 預り金の自動仕訳
     → 給与支払明細と連動させ、源泉所得税・社会保険料従業員負担分は必ず預り金に集約。

  • 未払金の登録ルール
     → 備品や外注費の掛取引に限定し、仕入関連は別ルールで買掛金に振り分け。

  • 未払費用の登録ルール
     → 決算調整時にのみ発動するよう設定し、日常仕訳では登録しない。


税務調査で指摘されないための証憑管理

  • 預り金の根拠資料:給与明細、社会保険料計算書、納付書控え

  • 未払金の根拠資料:請求書、契約書、納品書

  • 未払費用の根拠資料:契約書、役務提供期間の明細、計算根拠メモ

特に未払費用は「発生日」「期間」「金額根拠」が明確でないと損金算入が否認される可能性があります。


社内ルール化のすすめ

小規模事業でも、科目の使い分けを社内ルールとして文書化しておくと効果的です。

  • 定義表(預り金・未払金・未払費用の用途)を作成

  • 新任経理担当者向けマニュアルに記載

  • 決算前に必ず勘定科目残高を点検


実務改善の行動例

  1. 会計ソフトの自動仕訳ルールを見直す(30分〜1時間)

  2. 既存の仕訳データを抽出し、誤用パターンを洗い出す(半日程度)

  3. 社内の経理担当者へ簡易マニュアルを共有(30分程度)

  4. 決算2か月前に残高確認を実施(毎期恒例化)


まとめ

預り金・未払金・未払費用は、いずれも負債科目ですが、その性質や計上ルールは大きく異なります。
正しい区別は、経理の正確性だけでなく、税務調査でのリスク回避にも直結します。

日々の入力時にチェックリストを使い、会計ソフトの自動仕訳設定を見直すことで、誤用は大幅に減らせます。
また、証憑管理と社内ルール化を徹底すれば、決算時の修正や税務上の指摘も回避できます。

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