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源泉徴収と年末調整の仕訳まとめ|給与・賞与・法定福利費の会計処理完全ガイド

給与計算と仕訳を正しく理解することが経営の信頼性を支える

中小企業や個人事業主にとって、給与や賞与の支払いは日常的な業務のひとつです。
しかし、その裏側には源泉徴収・年末調整・法定福利費といった複雑な会計処理が存在します。

これらの処理を正しく行わないと、次のような問題が生じます。

  • 税務署への納付漏れや期限遅延による加算税・延滞税

  • 給与明細と仕訳の不一致による会計誤差

  • 決算時に法定福利費や未払費用がずれる

  • 従業員からの問い合わせや不信感の発生

給与計算は単なる「支払い処理」ではなく、会社の信頼を左右する重要な経理タスクです。
この記事では、源泉徴収と年末調整の流れを踏まえながら、仕訳の考え方と実務処理を体系的に解説します。


なぜ源泉徴収と年末調整の仕訳は混乱しやすいのか

給与や賞与に関する仕訳が難しく感じる最大の理由は、「支給額」と「手取額」が一致しないことです。
実際には、給与を支払う際にさまざまな控除が発生します。

代表的な控除項目は以下の通りです。

控除項目 内容 会計上の取扱い
所得税 給与から天引きして税務署に納付 預り金(源泉所得税)
住民税 市区町村から通知された金額を天引き 預り金(住民税預り金)
社会保険料 健康保険・厚生年金などの従業員負担分 預り金(社会保険料預り金)
雇用保険料 給与から天引きし、事業主分と合算して納付 預り金(雇用保険料預り金)

これらの天引き額は、いずれも**「一時的に会社が預かるお金」**であり、会社の費用ではありません。
したがって、経理処理では「預り金」として区分し、後日納付時に消す仕訳を行う必要があります。

また、社会保険料や源泉所得税の納付タイミングが給与支給日と異なることも混乱の原因です。
会計上は「発生主義」で処理するため、支給時点と納付時点を正しく区別する必要があります。


源泉徴収の流れを理解する

源泉徴収とは、会社が従業員に給与を支払う際に所得税などを天引きして国に納める制度です。
この制度によって、従業員が自分で確定申告をしなくても一定の税金が自動的に徴収されます。

【源泉徴収の基本プロセス】

  1. 給与計算時に所得税を計算(源泉徴収税額表を使用)

  2. 給与支給日に、所得税を天引きした「手取り額」を支払う

  3. 翌月10日までに、税務署へ源泉所得税を納付

  4. 年末に年末調整を行い、過不足を精算

この流れを仕訳で表すと、次のようになります。

【給与支給時の仕訳例】

(借方)給与手当    300,000    (貸方)預り金(源泉所得税) 10,000    (貸方)預り金(社会保険料) 45,000    (貸方)現金預金      245,000

給与手当は総支給額で記帳し、天引き分は「預り金」に振り替えるのがポイントです。

【源泉所得税納付時の仕訳例】

(借方)預り金(源泉所得税) 10,000    (貸方)現金預金    10,000

支給時に記録した預り金を取り崩し、納付により処理が完結します。


年末調整の会計処理を理解する

年末調整は、1年間に天引きされた所得税と、実際に納めるべき税額を年末に再計算して精算する手続きです。
このとき、次のようなパターンが発生します。

区分 状況 会計処理
還付 所得税を取りすぎていた場合 給与に上乗せして返金(預り金を減額)
追徴 所得税を取りすぎていた場合 翌月納付額に加算(預り金を増額)

【還付の場合】

(借方)預り金(源泉所得税) 5,000    (貸方)現金預金    5,000

従業員への返金は預り金の取り崩しで処理します。

【追徴の場合】

(借方)給与手当      5,000    (貸方)預り金(源泉所得税) 5,000

追徴額は給与から追加で天引きし、翌月の納付額に含めます。

このように、年末調整は「預り金の調整」として仕訳を行うことがポイントです。


賞与(ボーナス)支給時の仕訳と注意点

賞与(ボーナス)は給与と同様に源泉徴収と社会保険料の控除が必要です。
ただし、賞与は**特別徴収票別表(賞与支払届)**に基づいて所得税が計算されます。

【賞与支給時の仕訳例】

(借方)賞与      500,000    (貸方)預り金(源泉所得税) 25,000    (貸方)預り金(社会保険料) 75,000    (貸方)現金預金      400,000

【ポイント】

  • 源泉所得税は「賞与支払時の税率表」を使用する

  • 社会保険料は給与と同様に預り金で処理

  • 会社負担分の社会保険料は「法定福利費」で別仕訳

【会社負担分の仕訳】

(借方)法定福利費   75,000    (貸方)未払金(社会保険料) 75,000

賞与は支給額が大きいため、翌月の社会保険料納付額も大きくなる点に注意しましょう。


法定福利費の会計処理を正確に行う

法定福利費とは、会社が負担する社会保険料・労働保険料などの総称です。
給与のように従業員への支払いではなく、会社が法的に負担すべき義務費用として扱います。

費目 負担者 勘定科目 支払先
健康保険料・厚生年金保険料 会社・従業員で折半 法定福利費(会社負担分) 年金事務所
雇用保険料 会社・従業員で折半 法定福利費(会社負担分) 労働局・銀行
労災保険料 全額会社負担 法定福利費 労働局
子ども・子育て拠出金 全額会社負担 法定福利費 年金事務所

これらは給与支給時には費用計上だけを行い、実際の納付時に未払金を消す流れになります。

【給与支給時(発生時)の仕訳例】

(借方)法定福利費   50,000    (貸方)未払金(社会保険料) 50,000

【納付時の仕訳】

(借方)未払金(社会保険料) 50,000    (貸方)現金預金    50,000

給与支給時に従業員負担分を「預り金」、会社負担分を「法定福利費」と分けることで、
損益計算書(P/L)上の費用と貸借対照表(B/S)上の未払項目が明確に分かれる仕組みになります。

給与・賞与・法定福利費の仕訳フローを一連で理解する

ここまで個別の仕訳を解説しましたが、実務ではこれらを一連の流れとして把握することが重要です。
給与や賞与、社会保険料、源泉所得税などは相互に関連しており、「支給 → 控除 → 納付 → 精算」の流れを整理しておくとスムーズに処理できます。

【給与支給〜納付の一連フロー】

処理ステップ 内容 勘定科目 備考
① 給与計算 総支給額を計上し、天引き額を控除 給与手当・預り金 発生主義で記帳
② 社会保険料控除 従業員負担分を天引き 預り金(社会保険料) 翌月納付
③ 所得税控除 源泉徴収税額を天引き 預り金(源泉所得税) 翌月10日納付
④ 法定福利費計上 会社負担分を費用化 法定福利費 損益計算書上の費用
⑤ 社会保険料納付 預り金・未払金を消す 現金預金 年金事務所・労働局へ支払
⑥ 年末調整 税金過不足を精算 預り金調整 源泉納付額に反映

このように、給与処理は複数月をまたぐ連続処理であることを意識することが大切です。
特に、給与支給月と源泉・社会保険納付月が異なる点を誤ると、月次残高がずれてしまいます。


よくある仕訳ミスとその修正方法

給与や年末調整に関する仕訳では、経理初心者がつまずきやすいポイントがいくつかあります。
ここでは代表的なミスと正しい修正方法を紹介します。

❌ ミス1:給与支給時に「手取り額」で記帳してしまう

誤り例

(借方)給与手当 245,000    (貸方)現金預金 245,000

この仕訳では「天引き項目」が考慮されていないため、正しい費用と税務申告額が一致しません。

正しい仕訳

(借方)給与手当      300,000    (貸方)預り金(源泉所得税) 10,000    (貸方)預り金(社会保険料) 45,000    (貸方)現金預金      245,000

給与はあくまで**「総支給額ベース」**で記帳するのが正しい方法です。


❌ ミス2:会社負担分の社会保険料を記帳し忘れる

給与計算ソフトで自動計算されても、仕訳に反映していないケースが多く見られます。
会社負担分を計上しないと、法定福利費の費用が過少になります。

正しい仕訳

(借方)法定福利費   50,000    (貸方)未払金(社会保険料) 50,000

この処理を忘れると、決算時に社会保険料の負担額が実態よりも少なくなり、利益が過大に計上されるリスクがあります。


❌ ミス3:年末調整の還付・追徴を仕訳しない

年末調整で税金の過不足が出ても、給与明細上だけで処理を終えてしまうケースがあります。
還付・追徴は預り金を正しく調整しないと、翌年の源泉所得税残高が不正確になります。

正しい仕訳例

還付の場合:

(借方)預り金(源泉所得税) 5,000    (貸方)現金預金    5,000

追徴の場合:

(借方)給与手当      5,000    (貸方)預り金(源泉所得税) 5,000

会計ソフトでの処理を効率化するポイント

会計ソフトを利用する場合、給与・賞与・社会保険・年末調整などのデータを自動仕訳連携させることで、大幅に手間を削減できます。
代表的なクラウド会計ソフト(freee・マネーフォワード・弥生など)には、以下のような連携機能があります。

機能 内容 効果
給与ソフト連携 給与計算データを自動で仕訳に反映 転記ミス防止
社会保険自動仕訳 会社負担・従業員負担を自動判別 費用区分の統一
年末調整データ反映 年末調整の追徴・還付を自動反映 預り金残高の精度向上
銀行口座連携 源泉・保険料の納付仕訳を自動登録 支払漏れ防止

これらを活用することで、人為的な入力ミスを防ぎ、月次決算をスピード化できます。
特にfreee会計やマネーフォワードでは、「給与計算freee」「マネーフォワード給与」との連携で、
支給明細・仕訳・振込データを一気通貫で処理することが可能です。


実務で押さえるべきチェックリスト

源泉徴収や年末調整は、単発の処理ではなく「年間を通じての流れ」で考えることが大切です。
以下のチェックリストを使うと、月次・年次処理を漏れなく管理できます。

【月次処理チェックリスト】

項目 チェック内容
給与支給仕訳 給与手当・預り金・法定福利費を正しく区分
源泉所得税 翌月10日までに納付(納期特例企業は年2回)
社会保険料 翌月末までに納付済みか確認
給与明細 総支給額と会計仕訳が一致しているか

【年末調整チェックリスト】

項目 チェック内容
扶養控除等申告書 全社員から提出済みか確認
源泉徴収票 金額・マイナンバー・住所の誤りがないか
源泉納付書 過不足精算分を含めた金額で納付済みか
預り金残高 年末時点で不一致がないか

正しい会計処理が信頼と経営効率を高める

給与や源泉徴収の処理は「税務の義務対応」にとどまらず、
経営管理とキャッシュフローの安定に直結します。

  • 源泉徴収や社会保険料を正確に仕訳することで、未払残高を正確に把握できる

  • 法定福利費を正確に計上することで、費用配分の妥当性が明確になる

  • 年末調整の過不足を処理することで、翌年の税務申告がスムーズになる

中小企業や個人事業主にとって、これらの処理を自動化・標準化することは、
信頼性の高い会計システムを構築する第一歩です。

経理担当者だけでなく、経営者自身も「源泉徴収と年末調整の仕訳の流れ」を理解しておくことで、
顧問税理士との連携やクラウド会計の導入判断もスムーズになります。

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