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棚卸資産の評価と低価法・評価損の税務|決算前に見直す在庫で節税を実現

決算直前に見直したい「棚卸資産」の扱い

企業や個人事業主にとって、決算前に必ず行う作業のひとつが「棚卸」です。
商品・材料・仕掛品など、事業で保有する在庫を数え、その金額を「棚卸資産」として計上します。

この棚卸資産は、税金の計算に大きな影響を与える項目です。
なぜなら、期末に残っている在庫の金額が多いほど、当期の経費(売上原価)が減り、利益が増える=税金が増えるからです。

一方で、在庫の価値が下がっているにもかかわらず高い評価で残してしまうと、実際よりも高い利益を計上してしまうリスクがあります。
こうした誤差を防ぐために使われるのが、「低価法」や「評価損の計上」といった会計・税務上のルールです。

本記事では、棚卸資産の評価方法や低価法の仕組み、評価損を活用した節税のポイントを、経営者・フリーランス向けにわかりやすく解説します。


棚卸資産の評価が経営と税金に与える影響

棚卸資産とは何か?

棚卸資産とは、次のように販売や製造のために保有している在庫のことを指します。

区分具体例
商品仕入れて販売するもの(例:小売店の商品)
製品自社で製造して販売する完成品
仕掛品製造途中のもの(例:加工中の部品)
原材料製造や加工に使う材料
貯蔵品消耗品などの在庫(例:包装資材・文具など)

これらは、決算日における「在庫数量×単価」で評価されます。
つまり、**どの単価で評価するか(評価方法)**によって、決算書上の利益が変動します。


棚卸資産の評価と税金の関係

売上原価の計算式は次の通りです。

売上原価 = 期首棚卸高 + 当期仕入高 - 期末棚卸高

期末棚卸高が増えるほど、売上原価が少なくなり、利益(課税所得)が増加します。
逆に、棚卸資産の価値を適正に引き下げれば、経費(売上原価)が増え、税金を減らすことができます。

この調整の鍵となるのが、「低価法」や「評価損」の考え方です。


棚卸資産の評価方法の基本

棚卸資産の評価には、以下のような方法があります。

評価方法概要特徴
取得原価法仕入れた金額(原価)で評価する一般的・標準的な方法
低価法時価が原価より下がった場合、時価で評価在庫の実態に即した方法
評価損計上商品の陳腐化や損傷などによる価値下落を費用化節税効果あり

税務上は、原則として取得原価法を用い、例外的に低価法や評価損計上を認める形となっています。


棚卸資産の評価単価の算出法

棚卸資産の単価を求める方法も複数あります。

評価単価の算出方法概要特徴
先入先出法先に仕入れたものから販売されたとみなす物価上昇時に利益が増える傾向
後入先出法後に仕入れたものから販売されたとみなす現在の価格に近い評価になる
移動平均法仕入れごとに平均単価を更新実務で最も多く使用される
総平均法期中の仕入総額を総数量で割る簡便だが精度はやや低い

企業規模や業種によって、採用すべき方法は異なります。
たとえば、小売業では「移動平均法」、製造業では「総平均法」を用いるケースが多く見られます。


低価法とは?在庫の価値を下げるための評価ルール

低価法の考え方

低価法とは、在庫の「時価」が「原価」を下回っている場合、時価で評価してよいというルールです。
たとえば、仕入れ価格が10万円の商品が市場価格の下落で7万円の価値しかなくなっている場合、
評価額を7万円に下げることができます。

この3万円の差額が「評価損」として費用計上され、結果的に利益が減り、税金も少なくなります。


「時価」の判断基準

ここでいう時価とは、一般的に**再調達価額(同じものを今購入する際の価格)販売価額(見積もり販売価格から販売経費を引いた額)**を指します。

在庫の性質によってどちらを採用するかは異なりますが、基本的には「その在庫を売ったり使ったりして得られる価値」で判断します。


低価法の適用が認められるケース

税務上、低価法を適用できるのは次のような場合です。

  • 市場価格の下落が明確で、帳簿価格との差が実質的に存在する
  • 商品が旧型化・陳腐化しており、販売価格が低下している
  • 破損・汚損などにより販売可能価値が下がっている

つまり、単に売れ残っているだけでは低価法の適用はできません。
「時価が原価を明らかに下回っている」ことを客観的に証明できる資料(見積書、販売履歴など)が必要です。


税務上の取り扱い

法人税法では、低価法の適用について次のように定められています。

棚卸資産の評価額は、原則として取得価額による。ただし、時価が著しく低下している場合には、その時価によることができる。

つまり、低価法の適用は任意ではあるが、税務上も認められた正当な方法です。
ただし、年度によって恣意的に原価と時価を使い分けることは認められず、
一度採用した評価方法は継続適用する必要があります。


棚卸資産の評価損とは?損金算入できる条件

評価損とは何か

評価損とは、棚卸資産の価値が減少した分を費用として計上することを指します。
低価法も評価損の一種ですが、税務上はさらに明確に「損金算入できるケース」と「できないケース」が区分されています。


損金算入できる評価損の例

次のようなケースでは、税務上も評価損を損金として認められます。

状況内容損金算入の可否
市場価格の著しい下落原価を大幅に下回る販売価格しかつかない
破損・汚損・腐敗災害や劣化で販売できない
商品の陳腐化モデルチェンジ・季節外れなどで価値低下
不良在庫の発生長期滞留や返品で販売見込みがない○(合理的根拠が必要)

損金算入できない評価損の例

一方、以下のようなケースでは損金算入が認められません。

状況内容損金算入の可否
販売が一時的に低迷需要が一時的に落ちているだけ×
売り方を変えれば売れる値下げや販促次第で販売可能×
主観的判断のみ「売れそうにない」といった感覚だけ×

税務上は「合理的・客観的な証拠」が重要であり、
たとえば販売履歴、見積書、市場価格調査、損傷写真などを保管しておくことで、税務調査でも説明できる状態にしておくことが求められます。

評価損を計上するタイミングと仕訳の具体例

評価損を計上する時期

評価損は、その価値の下落が明らかになった事業年度に計上する必要があります。
たとえば、商品が決算日前に破損・陳腐化した、または販売価格が著しく下落したことが確認できた場合、その決算で評価損を計上できます。

逆に、翌期以降に判明した下落は、その時点の期で処理する必要があります。
つまり、「決算時点で価値が下がっていると認められる証拠」がポイントです。


評価損の仕訳例

具体的な仕訳例を見てみましょう。

例1:市場価格の下落による評価損

原価10万円の商品が、時価7万円に下落した場合

(借方)棚卸資産評価損 30,000円 / (貸方)商品 30,000円

この処理により、損益計算書上で3万円の費用が発生し、課税所得が減少します。

例2:破損品・不良品の廃棄

在庫商品の一部(原価20万円)が破損し、廃棄処分にした場合

(借方)棚卸資産評価損 200,000円 / (貸方)商品 200,000円

廃棄を実施した記録(廃棄報告書・写真・処分証明書など)を残しておくことで、税務上も損金算入が認められやすくなります。


節税につながる「棚卸の見直し」実践ステップ

棚卸資産は単なる会計処理ではなく、キャッシュフローと節税を左右する重要な経営指標です。
決算前に次のステップで見直すと、無理のない節税が可能になります。


ステップ1:在庫を正確に把握する

まずは、実地棚卸を行いましょう。
帳簿上の在庫と実際の数量・状態に差があると、誤った評価につながります。

  • 売れ残り品、破損品、旧型品を区別

  • 使用期限切れ・季節外商品を確認

  • 実際に使えない資材は除外

この作業により、在庫の「死蔵資産」を洗い出すことができます。


ステップ2:在庫の時価を見積もる

在庫の実際の市場価値(時価)を調べます。
例えば以下のような方法が考えられます。

  • 仕入先・販売先へのヒアリング

  • 同一商品の市場価格調査

  • オークション・販売履歴の確認

特に古い在庫やモデルチェンジ品は、帳簿価格より時価が下がっているケースが多く、評価損の計上余地があります。


ステップ3:低価法・評価損を適用できるか判断

在庫を分類し、「税務上認められる下落」かどうかを判断します。

状況 判断のポイント 処理方法
明確な価格下落 販売価格が仕入原価を下回る 低価法で時価評価
破損・汚損・腐敗 使用・販売不能 評価損として費用化
長期滞留・陳腐化 売却困難で合理的証拠あり 評価損または除却処理
一時的な売上低下 翌期以降に販売可能 原価のまま据え置き

ここで重要なのは、「証拠」です。
値札、販売見積、販売記録、在庫写真などを残しておくことで、税務調査での説明責任を果たすことができます。


ステップ4:評価損を帳簿に反映し、節税効果を確認

評価損を計上することで、一時的に利益が減少し、法人税・所得税の負担も軽減されます。
ただし、翌期に在庫が売れた場合には、その売上が課税対象になります。

したがって、「節税のために過度に評価を下げる」ことは避けるべきです。
実態に即した評価で適正な利益計算を行うことが、税務上・経営上の信頼性につながります。


税務調査で指摘されないための注意点

棚卸資産の評価損は、節税効果が大きい分、税務署からの確認対象になりやすい項目です。
以下の点に注意しておきましょう。


1. 評価基準を毎年変えない

低価法や評価方法を毎年変更すると、「恣意的な利益操作」とみなされるリスクがあります。
一度採用した評価基準は継続適用が原則です。

もし方法を変える場合は、「会計方針の変更」として明示し、理由を明確にする必要があります。


2. 評価損の根拠資料を保存する

税務上は、「その価値が下がったことを証明できる資料」が必要です。
以下のような資料を保存しておきましょう。

  • 市場価格が下落した証拠(見積書・仕入れ価格表)

  • 在庫の破損や劣化を示す写真・報告書

  • 長期滞留リスト、廃棄証明書

これらを決算書類と一緒に保管しておくことで、調査対応もスムーズになります。


3. 在庫削減だけに頼らない

在庫を減らすことはキャッシュフローの改善に効果的ですが、過度に在庫を減らすと販売機会の損失にもつながります。
棚卸評価の目的は「節税」だけではなく、経営効率を高めることでもあります。


経営に活かす棚卸分析の視点

棚卸資産は単なる会計数値ではなく、経営の健康状態を示すバロメーターです。
決算時に以下の指標をチェックしてみましょう。

指標 計算式 意味
棚卸資産回転率 売上高 ÷ 棚卸資産 在庫がどれだけ効率的に売れているか
棚卸資産回転期間 棚卸資産 ÷ 売上原価 × 365日 在庫が平均何日で売れているか

この数値が悪化している場合は、販売サイクルの遅延や仕入過多の可能性があり、資金繰りにも影響します。
評価損を計上するだけでなく、在庫管理の改善と資金効率化を合わせて検討することが重要です。


決算前に経営者が取るべき具体的アクション

棚卸資産の評価見直しは、決算直前の「最後の節税チャンス」です。
以下の手順で進めましょう。

  1. 在庫の実地棚卸を実施し、数量と状態を正確に把握する

  2. 不良在庫・滞留在庫をリスト化する

  3. 市場価格・再調達価額を調査する

  4. 低価法または評価損の計上を検討する

  5. 根拠資料(見積・写真・販売履歴)を保管する

これにより、正確な損益計算と税務リスクの回避、そして適正な節税を同時に実現できます。


まとめ|在庫を正しく評価し、利益をコントロールする

棚卸資産の評価は、数字上の調整にとどまらず、経営戦略の一部です。
低価法や評価損を正しく使うことで、実態に合った利益計算ができ、無理のない節税が可能になります。

ポイントを整理すると以下の通りです。

  • 棚卸資産の過大評価は税負担増につながる

  • 低価法を使えば市場価値に合わせて在庫評価を引き下げ可能

  • 評価損は「合理的な根拠」があれば損金算入できる

  • 根拠資料を残すことで税務調査にも対応できる

  • 節税と同時に、在庫管理・資金効率改善にもつながる

在庫は「眠るお金」。
決算前に一度見直すことで、無駄な税金を減らし、健全な経営を実現しましょう。

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