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繰越欠損金と繰戻還付を徹底解説|赤字を税金に活かす実践ガイド【中小企業向け】

赤字でもチャンスあり?税金を取り戻す仕組み

会社や個人事業を経営していると、黒字の年もあれば赤字の年もあります。
「赤字になったら税金が減る」と考える人は多いですが、実際にはそれだけではありません。
税務上の仕組みを理解しておくと、過去に払った税金を取り戻すことができる場合があります。

それが「欠損金の繰越控除」と「欠損金の繰戻還付」という2つの制度です。
この制度をうまく使えば、赤字を翌年以降の節税に使ったり、前年の税金を還付してもらうことも可能です。

しかし、これらは税務署への手続きや期限管理が厳しく、知らないとせっかくの権利を失ってしまうこともあります。
本記事では、赤字を「損失」として終わらせず、「税金対策」に変えるための仕組みと実務のポイントを、図解と例を交えて解説します。


欠損金とは?まずは基本の考え方を整理

欠損金=「赤字のうち、税務上で認められる損失」

会計上で赤字が出ても、それがすべて税務上の損金として認められるとは限りません。
税法では、損益計算書上の赤字から税務上認められない項目(交際費超過分や寄付金など)を除いた残りが「欠損金」となります。

つまり、欠損金とは「税務上正式に認められた赤字」のことです。
この欠損金を、翌年以降の黒字と相殺できるのが「繰越控除」、前年にさかのぼって還付を受けられるのが「繰戻還付」です。


赤字を未来の節税に活かす「欠損金の繰越控除」

仕組みの概要

欠損金の繰越控除とは、ある年度に発生した欠損金(赤字)を、翌年度以降の黒字から差し引くことができる制度です。
たとえば、前期に300万円の赤字、当期に500万円の黒字があった場合、差引き後の200万円にだけ税金がかかります。

年度 利益(損失) 繰越欠損金 課税所得 法人税
前期 ▲300万円 0円 0円
当期 500万円 ▲300万円 200万円 約60万円(※30%想定)

このように、赤字を翌年以降の節税に使えるのが繰越控除の特徴です。


繰越できる年数

現在、欠損金の繰越控除期間は以下のとおりです。

区分 控除期間
中小企業 10年間
大企業(資本金1億円超) 10年間(ただし控除限度あり)

つまり、10年以内であれば、赤字を黒字に充当して節税できます。
これは、長期的な経営を支える重要な税務戦略になります。


控除できる限度

中小企業は「100%」の控除が可能ですが、大企業は一部制限があります。

区分 控除限度割合
中小企業 100%(全額控除可)
大企業(資本金1億円超) 50%まで

中小企業や一人法人の場合、欠損金を全額控除できるため、特に恩恵が大きい制度といえます。


赤字を過去の税金に還付できる「欠損金の繰戻還付」

繰戻還付とは?

繰戻還付とは、「赤字になった年度の欠損金を、前年の黒字と相殺して、すでに納めた法人税を返してもらう制度」です。

たとえば、前年に利益500万円で法人税150万円を払ったが、今年は赤字300万円だった場合——
その300万円分を前年にさかのぼって相殺し、法人税の一部(約90万円)を還付してもらえる仕組みです。

年度 利益(損失) 税金 備考
前年 +500万円 約150万円 法人税納付済
当年 ▲300万円 欠損金発生 → 還付請求可能
還付額 約90万円 税金を取り戻せる

対象となる会社

繰戻還付は、**中小企業(資本金1億円以下)**で、青色申告をしている法人に限定されています。
また、設立初年度の赤字でも使うことができます。

区分 適用可否
中小企業(青色申告)
大企業(1億円超) ×
個人事業主(青色申告) △(別制度であり「純損失の繰戻還付」)

青色申告をしていない法人は、この制度を使うことができません。
したがって、赤字が出る可能性のあるスタートアップや小規模法人は、青色申告の届出が必須です。


繰戻還付の手続き

繰戻還付を受けるには、確定申告書に以下の書類を添付します。

  • 欠損金の繰戻還付請求書(法人税別表7)

  • 欠損金の計算に関する明細書

  • 前年分の確定申告書控え

この書類を提出すると、申告後1〜2か月ほどで還付金が振り込まれます。


還付請求の期限

繰戻還付の請求期限は、欠損事業年度の確定申告書の提出期限から1年以内です。
(原則:決算日から2か月+1年)
たとえば、3月決算の会社なら翌年5月末までに申請する必要があります。

この期限を過ぎると、還付の権利を失うため、注意が必要です。


「繰越控除」と「繰戻還付」の違いを整理

比較項目 繰越控除 繰戻還付
対象 赤字を翌年以降に繰り越す 赤字を前年にさかのぼる
効果 将来の税金を減らす 過去の税金を取り戻す
手続き 確定申告書で自動的に処理 還付請求書を別途提出
対象期間 最大10年 原則1年(1期分)
適用対象 青色申告の法人 青色申告の中小法人

どちらも「赤字を活かす」制度ですが、未来志向(繰越)か過去還付(繰戻)かの違いがあります。
資金繰りが厳しい場合は「繰戻還付」、長期的な節税を狙うなら「繰越控除」が有効です。

欠損金を確実に活かすための実務ポイント

青色申告をしていないと一切使えない

繰越控除・繰戻還付のどちらも、「青色申告をしていること」が大前提です。
青色申告とは、税務署に「青色申告の承認申請書」を提出し、複式簿記で正確に帳簿を付けている法人や個人事業者を指します。

もし白色申告のままでは、赤字が出ても税務上の欠損金として扱われず、繰越・還付のどちらも適用外になります。
特に設立初年度や創業間もない個人事業者は、この申請を忘れがちです。

申請期限の目安

  • 法人:設立日から3か月以内または最初の事業年度終了日まで

  • 個人事業主:開業日から2か月以内

この期限を過ぎると、翌年度まで青色申告ができなくなるため、早めの手続きが重要です。


欠損金の管理方法

欠損金を繰り越す際には、決算ごとに「別表7(繰越欠損金の明細書)」を作成し、毎期の申告で引き継ぐ必要があります。

【管理の流れ】

  1. 欠損金が発生した年度 → 別表7(1)で欠損金を記録

  2. 翌年度以降の黒字年度 → 別表7(2)で控除額を記載

  3. 残高を翌年へ繰り越し

このように、毎期の申告で正しく引き継がなければ、途中で繰越欠損金が消滅することもあります。
会計ソフト(freee・マネーフォワード等)を使用する場合も、年度繰越データが正しく引き継がれているか確認が必要です。


税務上否認されやすいパターン

税務署は欠損金を悪用した利益調整を防ぐため、申告内容を厳しくチェックします。
以下のようなケースでは、繰越や還付が否認されることがあるので注意しましょう。

否認される主なケース 理由・背景
青色申告承認が失効していた 期限内に申請していない、帳簿不備
申告期限を過ぎて申告した 期限後申告では繰越控除不可
旧法人を利用して欠損金を引き継ごうとした 合併・事業承継時は制限あり
繰戻還付請求期限を超過 還付請求は1年以内限定
会計上の損失と税務上の欠損が異なる 税務調整不足、別表ミス

とくに多いのは「期限後申告」と「別表の記載ミス」です。
たとえ正しい赤字でも、形式要件を満たしていなければ適用されません。


欠損金の節税効果を最大化する戦略

1. 赤字の年度を無駄にしないスケジューリング

欠損金の繰越は最長10年使えますが、10年を過ぎると自動的に消滅します。
そのため、利益が出る年度に合わせて「欠損金を消化するペースを計画的に」調整することが大切です。

特に、設備投資や新規雇用などで赤字が出た年の後に黒字化する場合、
あらかじめ翌年度以降の黒字見込みを立てておくと、繰越欠損金を効果的に活用できます。


2. 繰戻還付でキャッシュフローを改善

資金繰りが厳しいときには、繰戻還付を使って「即金で税金を取り戻す」のが効果的です。
特に設立2期目などで赤字になった場合、初年度に納めた法人税を還付してもらうことで、資金に余裕を持たせられます。

メリット

  • 申告後1〜2か月で現金還付される

  • 倒産防止・資金調達の代替手段にもなる

  • 無利息で返ってくるため実質的なキャッシュ増

一方で、翌期の黒字と相殺する余地があるなら、繰越控除の方が長期的な節税になるケースもあります。
したがって、資金状況に応じて「繰戻」か「繰越」かを選択するのが理想です。


3. 節税設計としての「繰戻と繰越の使い分け」

状況 適用すべき制度 理由
創業2期目で赤字、資金不足 繰戻還付 過去の税金を早期回収できる
今期赤字だが翌期黒字見込み 繰越控除 将来の税負担を軽減できる
長期的に業績が安定している 繰越控除 節税計画を立てやすい
売上変動が激しい業種 繰戻還付+繰越控除併用 キャッシュ確保と節税を両立

このように、単に「税金を減らす」だけでなく、資金繰りと将来計画の両面から設計することがポイントです。


個人事業主の場合の違い

個人事業主にも「純損失の繰越控除・繰戻還付」という制度があります。
ただし、法人と異なり、対象期間や制限が少し異なります。

区分 繰越期間 繰戻期間 適用要件
青色申告者 3年間 前年分のみ 事業所得・不動産所得・山林所得の赤字
白色申告者 不可 不可 対象外

個人でも青色申告をしていれば、赤字を翌年以降に繰り越したり、前年にさかのぼって還付を受けられます。
副業での事業所得や不動産投資でも活用できるため、個人経営者も必ず青色申告にしておくことが重要です。


税務調査で確認されやすいポイント

税務署は、欠損金の計上や還付請求について以下の点を重点的にチェックします。

  1. 実際に赤字が発生しているか(売上・経費の根拠)

  2. 青色申告の承認が継続しているか

  3. 申告期限を守っているか

  4. 欠損金の金額が正しく別表7に反映されているか

  5. 繰戻還付の請求額と法人税計算に整合性があるか

これらをきちんと整えておけば、税務調査で否認されることはほとんどありません。
特に、帳簿の整合性と別表の整備が信頼性のカギになります。


節税効果を数値で見る:事例シミュレーション

【ケース1】前期黒字500万円・今期赤字300万円の場合(繰戻還付)

  • 前期法人税:約150万円(30%想定)

  • 繰戻還付で戻る税金:約90万円
    資金繰りが改善し、翌期の運転資金に充当可能。

【ケース2】今期赤字800万円・翌期黒字600万円の場合(繰越控除)

  • 翌期の課税所得:600万円−800万円=0円
    翌期の法人税は発生せず、800万円のうち200万円をさらに繰り越し可能。

このように、赤字をうまく利用すれば税負担をゼロに近づけ、資金効率を高めることができます。


実務チェックリスト(法人向け)

チェック項目 対応 備考
青色申告の承認を受けているか □済/□未 承認期限を確認
欠損金を別表7で正しく引き継いでいるか □済/□未 会計ソフト設定確認
繰戻還付請求期限を把握しているか □済/□未 決算後1年以内
還付請求書類を提出したか □済/□未 添付書類の整合性確認
欠損金を10年以内に消化できる計画か □済/□未 長期シミュレーション
税務調査で提示できる証拠を保管しているか □済/□未 帳簿・決算書・申告書控え

このチェックリストを活用することで、欠損金を確実に節税に活かせる体制が整います。


まとめ:赤字を「損」ではなく「資産」に変える

ポイント 内容
欠損金の繰越控除 将来の黒字から差し引いて節税
欠損金の繰戻還付 過去に払った税金を取り戻す
青色申告の重要性 どちらも青色申告でなければ使えない
実務上の注意点 別表管理・期限管理・証拠保管
戦略的活用 資金繰りと節税の両立を図る

欠損金制度は「赤字を帳簿上で終わらせず、将来の利益を守るための制度」です。
税務知識があれば、赤字も経営資源として活用できます。
正しく理解して、あなたのビジネスの**“税金体質”を強くする第一歩**を踏み出しましょう。

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